「忘却の空」
黒夢の項で、「SADSは黒夢ほど心に来なかった」と書いたが、だからといってSADSが嫌いだったわけではない。SADSはSADSで好きだった。
まず、私が黒夢に興味を持った頃には、既に黒夢は活動停止後。リアルタイムの清春さんを追いかけようと思ったら、当然現役活動中だったSADSなわけで。
相方の人時さんとの断絶によって活動停止を余儀無くされた黒夢。清春さんが勝手に長期のライブツアー予定を入れてしまい、既に家庭もあった人時さんがそれについていけないことが、活動停止の引き金のひとつとなった。
で、SADSでは清春さんはどうだったかというと………。黒夢時代以上にワンマン経営になっていた。
デビューシングル発売のタイミングで速攻でベーシストが脱退しているのだ。一応シングル「TOKYO」のジャケットでモノクロ写真は拝めるが………この方がどのような人物だったのか、私はさっぱり知らない。
「TOKYO」
そしてこのデビューシングル「TOKYO」の歌い出し……。
途切れた黒い夢に今日も惑わされる
……なんて露骨なんだ。ある意味、超自己中な内容の歌詞なのだが。
このデビューシングルと時を同じくしてヨーロッパツアーを敢行。テレビ番組でその模様が中継され、当時楽曲内で散々批判していた小室哲哉氏とJ-POPについて語るという、色々とカオスな展開が繰り広げられた。
1stアルバム「SAD BLOOD ROCK'N'ROLL」は、黒夢末期のパンク路線をそのまま受け継いだ、初期衝動満載の名盤だった。
「CRACKER'S BABY」
「SANDY」
そのままパンク路線まっしぐらかと思われたが、その半年後の「BABYLON」ではグラマラスなロックンロールを主体とした作風に。ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」の主題歌となった「忘却の空」が大ヒットした直後のアルバムにもかかわらず、妖艶な作風。でもそんな作風にもかかわらず30万枚を売った。
「赤裸々」
しかしそれでもレコード会社と契約した売上約束に届かなかったらしく、以前からモヤモヤと存在していた東芝EMIとの確執が大きくなってしまった。
「Easy Money Island」と歌ってから8年、とうとう清春さんは、東芝EMIと隔絶した。
「PORNO STAR」
「See A Pink Cellophane」
BMGジャパンに移籍したSADSは、今度はグラマラスでメタリックな方向性に移行、清春さん本人曰く「リアル・ファースト・アルバム」(アルバム出す度そう言ってるけど……)である「THE ROSE GOD GAVE ME」を発表。
事あるごとに「リアル・ファースト・アルバム」発言をしている清春さんだが、このアルバムと「poetry」、そして「黒と影」は、本当にリアル・ファースト・アルバムと呼んで良い作品と思う。
「FINALE」
翌2002年にはなんとインディーズ落ち。バンドが高額の借金を抱えたという事情もあり、ただただツアーをこなしまくる年に。ライブ会場限定販売の「"untitled"」をリリースするも、バンドメンバー間のゴタゴタがこの時に表面化。ドラマーの満園氏が自身の不注意によって腕を負傷、ライブツアーからの離脱を余儀なくされ、それに清春は激怒。
「FAIRY'S MALICE」
「Masquerade」
半数が再録のアルバム「13」をリリースするも、この時点でバンドは壊滅状態。1羽と3羽に分かれたジャケット写真で当時のバンドの状態を皮肉る有様。
「GIRL IN RED」
「Sherry」
誰の目にもわかるゴタゴタ劇の中、明確な活動停止宣言はないものの、SADSは事実上の解散。
後年「SADSは最初からコケていた。僕の音楽人生の時間稼ぎ」とまで公言。
2010年、黒夢と共にSADSの活躍を再開することを発表。しかしメンバーは清春以外全員が新メンバー。実質的にはSADSの名を借りた別のバンド。
「GOTHIC CIRCUS」
「DISCO」
演奏陣が強化された新生SADSは、これはこれでカッコイイ。
・・・・・いや前回のSADSとは音圧が全然違う。えせメタルだった「THE ROSE GOD GAVE ME」も大好きなのだが、こちらは楽器陣が完全にメタル。
「ANDROGYNY INSANITY」
のだが、個人的にはやっぱりSADSでもソロでもなく黒夢なんだよな。初めに知ったのが黒夢なので、やっぱり刷り込みかな。